
店舗の入り口。ドアに手をかける、その一瞬。
僕はそこで、いつも小さく息を吸います。
「よし、ここからは"あの人"だ」——と。
全8回の第2回です。前回は、人見知りのまま上司をやらなきゃいけなくなった話をしました。今回はいよいよ、その乗り越え方——やる気スイッチの正体を話します。🔛
🎭 素の自分では、立てなかった
最初にたどり着いた答えは、少し変わっているかもしれません。
僕は、別の人格を作りました。 現場に立つときだけ被る、いわば「役」です。素の自分は人見知りで、目も合わせられない。でも「役」の自分は、明るく、堂々と、部下に声をかけられる。俳優が役に入るのと同じように、僕は現場に入る瞬間、その役に切り替えるようにしたんです。
これを僕は「やる気スイッチ」と呼んでいます。自分の中で「ここで切り替える」と場所を決めて、そこを通ったら別モードに入る。今は店舗に顔を出す、まさにその瞬間がスイッチです。ドアを開けたら、もう素の自分じゃない。
👕 昔は「制服に着替えたら」だった
このスイッチの位置は、実は少しずつ変わってきました。
始めた頃は「制服に着替えたら切り替え」というやり方でした。着替えという分かりやすい儀式を、切り替えの合図にしていたんです。でも慣れてくると、もっと手前——建物に入る瞬間、ドアに触れる瞬間へと、スイッチが前倒しになっていきました。
これは、慣れれば誰でも同じだと思います。最初は大げさな儀式が必要でも、繰り返すうちに、ほんの小さな合図で切り替えられるようになる。大事なのは「どこで切り替えるか」を自分で決めておくこと。決めていないと、ずるずると素のまま現場に立ってしまいます。
😌 第一印象は、"刷り込める"
なぜ「役」がうまくいくのか。理由は一つ、素の自分は、初対面の相手にはわからないからです。
考えてみてください。新しい職場の初日、入学式の朝。周りはあなたがどんな人か、まだ何も知りません。つまり、そこで見せた姿が、そのまま「その人の第一印象」として刷り込まれます。
僕はここを逆手に取りました。初対面で「役」の自分を見せれば、相手の中には「この人はこういう人だ」という像ができる。あとはその像を裏切らないように振る舞えばいい。人見知りだとバレる前に、先に印象を上書きしてしまうんです。
このコツをつかめると、新しい現場でも、初めて会うスタッフの前でも、同じように立てるようになります。僕は今でも、この「刷り込み」を意識してドアを開けています。
🗣️ スタッフにも、この話をします
人見知りで悩んでいるスタッフには、まずこの仕組みごと話します。「僕も素はこうなんだよ」「でも入り口でスイッチを入れてるんだよ」と。
すると、たいてい驚かれます。「え、そうは見えない」と。そう見えないなら、それこそがスイッチが効いている証拠です。無理に性格を変えろとは言いません。ただ「切り替える合図を一つ決めてみよう」と提案する。それだけで、ずいぶん楽になる子がいます。
🌟 まとめ:性格を変えるより、"切り替え"を持つ
人見知りを直そうとすると、一生かかっても終わりません。でも「役に入る」なら、今日から始められます。素の自分は変えなくていい。現場のあいだだけ、別のモードを起動する。そのスイッチをどこに置くかを、自分で決める。
あなたなら、どこにスイッチを置きますか。ドアの前ですか、着替えのあとですか、それとも通勤電車を降りた改札ですか。
次回は、この「役」をどこまで作り込むかの話。
——正反対の性格にすら、自分を"染めて"いく。その精度の話をします。🎭