
📍 シチュエーション
駅の商業施設に入っている、テイクアウト中心の小さな店を任されている。人はいつもギリギリで、常にどこかが薄い。
そんな中、同じ会社の別店舗を視察する機会があった。規模も業態も近い店だ。ピークの時間帯に短時間だけ入って、売場を見せてもらった。
まず目についたのは人の多さだった。売場に立っている人数が、自分の店より明らかに多い。最初は素直にうらやましいと思った。
ところが十分ほど見ていて、印象が変わった。お客様の波が引いたあと、全員が手持ち無沙汰になっている。声も出ていない。人が多いのに、売場が静かなのだ。動きが重なっていて、誰が何の担当なのか外から見ても分からない。
足りないのは人数だと思っていた。でもこの日見たのは、人数があっても回らない店の姿だった。
❌ よくあるNG対応
- 「人が足りないから売れない」で思考を止める。人数のせいにしている間は、配置も動線も一つも改善されない
- 逆に「人は少ない方が締まる」と極端に振る。絞りすぎれば取りこぼしが出るのは、こちらが何度も経験している
- 増員が決まった時に、人数だけ増やして役割を決めずに現場へ出す。これがいちばんもったいない
✅ 店長(SM)目線の推奨対応
見るべきは人数ではなく、「一人あたりに割り当てられた役割の数」だ。
数え方は難しくない。その時間帯にやるべき仕事を書き出して、人数と見比べるだけでいい。レジ、品出し、製造、声かけ、清掃。仕事の数より人数が多くなった時点で、誰かの持ち場が消える。
人が多い店で起きていたのは、役割の希釈だった。三人でやれば一人あたりの持ち場は三分の一になる。すると「自分が動かなくても誰かがやる」という空気が生まれる。手待ちは怠けではなく、役割が薄まった結果だ。
だから増員する時は、人数を足す前に「その人に何を任せるか」を決める。決められないなら、増やしても手待ちが増えるだけになる。
視察のあと、自店で一つ変えた。ピーク後の三十分、余った人手を「片付け」ではなく「次のピークの仕込み」に回す形にした。片付けは誰でも思いつくが、手が空いた瞬間に次の準備へ動ける人は少ない。ここを役割として明示したら、ピーク後の静けさが目に見えて減った。
これは店長だけの話ではない。自分の時間帯に人が多いと感じた時、「やることがない」のではなく「自分の持ち場が決まっていない」だけのことが多い。そう見ると、手が空いた時に自分で拾える仕事が見つかる。
💡 一歩進んだ視点
『7つの習慣』に「重要事項を優先する」という考え方がある。緊急ではないが重要なこと——いわゆる第二領域——に手をつけられるかどうかで、成果が変わるというものだ。
人員配置でいえば、「今日が回らない」は緊急、「配置の設計を見直す」は緊急ではないが重要にあたる。そして増員の要望は、ほぼ例外なく緊急の側から出てくる。今日が苦しいから人を足してほしい、という形だ。
でも本当に効くのは、苦しくない日に配置を組み直しておくことの方だ。緊急の側から人を足すと、役割を決める時間がないまま現場に出すことになる。それが手待ちを生む。人を増やすかどうかの判断は、忙しい日ではなく、余裕のある日にしかできない。
🌟 まとめ
- 見るべきは人数ではなく、一人あたりの役割の数。その時間帯の仕事を書き出して人数と見比べる
- 増員する前に「その人に何を任せるか」を決める。決められないなら手待ちが増えるだけ
- 配置の見直しは、忙しい日ではなく余裕のある日にやる