
📍 シチュエーション
発注業務を、育成中のスタッフに任せた日があった。数をこなすだけでなく、判断の部分も覚えてほしい。だからあえて、最初から最後まで一人で回してもらう形にしていた。
ところが退勤後に確認すると、発注数の計算までは終わっているのに、その先の作業が止まっていた。仕入れ数を最終確定してシステムに入力する工程が、手つかずのまま残っていたのだ。本人はすでに定時で上がっている。サボったわけではない。時間内は真面目に動いていて、それでも「計算まで」で力尽きた形だった。
しかもその日は、急なイレギュラー業務と別スタッフの病欠が重なり、自分自身も勤務を延長して現場を回していた。目の前には、途中で止まった発注業務がある。締め切りは待ってくれない。ここで自分が全部引き取れば、その日は丸く収まる。でも、それでいいのか。任せた意味がなくなるのではないか——という迷いがあった。
❌ よくあるNG対応
- 何も言わずに自分が全部引き取って終わらせ、本人には一切伝えない(次も同じことが起きる)
- 「なんで終わってないの」と、その場の感情で問い詰めてしまう
- 逆に本人へ丸投げして「明日やっておいて」と、締め切りそのものを無視する
✅ 店長(SM)目線の推奨対応
まず、その日の締め切りに間に合わせる分は、自分が引き取る。発注は翌日の営業やお客様に直結するので、ここは意地を張らずに巻き取ってよい。ただし「黙って引き取る」で終わらせないことが肝心だ。後日あらためて、本人と一緒に「どこで時間が足りなくなったか」を振り返る。
このとき責めるのではなく、作業のどの工程で詰まったかを特定する。今回なら「計算はできたが、そこから入力に回す時間の配分ができていなかった」。原因が能力ではなく段取り(時間配分)なら、手順を分解して「計算はここまで、入力はここから」と目安の時間をつけ、次回から時間内に収まる形に組み直せばいい。任せることをやめるのではなく、任せ方の解像度を上げる。それが、同じ失敗を繰り返させないための現実的な一手になる。
💡 一歩進んだ視点
カーネギーは『人を動かす』の中で、相手を批判する前に、まず相手の立場から状況を理解しようとすることの大切さを説いている。任せた業務が途中で止まっていたとき、こちらはつい「なぜできないのか」と本人の姿勢を疑いたくなる。だが多くの場合、原因は意欲ではなく、渡し方や段取りの設計側にある。
頭ごなしに直させるのではなく、「どこで手が止まった?」と本人の言葉で話してもらうと、こちらが軽く見ていた工程の重さが見えてくることがある。任せる、というのは丸投げすることではなく、一緒に段取りを設計していくことなのだと、あらためて感じた出来事だった。
🌟 まとめ
- 締め切りに間に合わせる分は引き取る。ただし黙って終わらせず、必ず後で一緒に振り返る
- 原因を「能力」ではなく「段取り(時間配分)」で捉え、手順を分解して渡す
- 任せることをやめず、任せ方の解像度を上げる