
📍 シチュエーション
以前、こちらから提案して見送りになった施策がある。それを今になって、上司から「なぜやっていないのか」と聞かれた。
会議の場だった。一番忙しい時間帯に、売場でお客様の質問にその場で答える案内役を一人立てる、という話だ。内容自体は理解できるし、必要性も感じている。ただ、同じ内容を以前こちらから出した時は、人員的に厳しいという理由で見送りになっていた。同席していた他のメンバーも、同じ違和感を持っていたようだった。
現場の実感としては、その時間帯は一人抜けるだけでレジも品出しも回らなくなる。それでも、その場で素直に「やります」と答えれば、しわ寄せは全部スタッフにいく。かといって「前に断られました」と返せば、話はそこで止まる。上司の指示と現場の判断が、まっすぐぶつかった瞬間だった。
これは店長だけの話ではないと思う。先輩や社員から降りてきた指示に納得できない時、立場は違っても、上と現場の間に挟まれる感覚は同じはずだ。
❌ よくあるNG対応
- その場で「以前は却下されましたよね」と過去を持ち出して反論する。実は自分も昔やったことがある。言い分は通ったように見えたが、以降その上司から相談を持ちかけられる回数が明らかに減った
- 何も言わずに全部飲み込み、現場には「上が言ってるから」と下ろす。スタッフから見れば、店長自身が納得していない施策をやらされる形になり、そこから「言われたことだけやる」空気が広がる
- 曖昧に返事をして、結局やらない。上司からは動かない店長、現場からは話を通してくれない店長に見える。いちばん損な選択だ
✅ 店長(SM)目線の推奨対応
まず、指示を「中身」と「目的」に分けて受け取る。上司が本当に欲しいのは、その施策そのものではなく、たいてい「その施策で得たい結果」の方だ。だから会議の場では反論せず、「一番改善したいのはどこか」を確認する。目的さえ共有できていれば、手段は現場で調整できる余地が生まれる。
そのうえで、過去の経緯は「反論」ではなく「事実確認」として置く。「以前は人員の都合で見送った経緯があります。今回は状況が変わったという理解でよいでしょうか」。この言い方なら、相手を責めずに前提だけをそろえられる。多くの場合、上司は過去の判断を覚えていない。悪意ではなく、単に情報が繋がっていないだけだ。
実際、この時に返ってきたのは「お客様が迷っている時間を減らしたい」という一言だった。それなら、まるまる一人を張り付ける必要はない。混み合う三十分だけ、レジ待ちが切れたタイミングで売場に出る形に変えた。上司が求めた結果は満たしたまま、現場の負担はほとんど増えていない。
そして現場に下ろすときは、「上が言ってるから」を使わない。目的を自分の言葉に翻訳して伝える。「この時間帯にお客様が一番迷っているから、そこに一人出たい」。上からの指示ではなく、店として何をしたいかの形にして初めて、スタッフは動ける。
この順番は、店長でなくてもそのまま使える。主任や先輩から納得できない指示が降りてきた時も、「一番直したいのはどこですか」と一つ聞くだけでいい。中身に反応する前に目的を押さえる。それだけで、自分が動かせる幅は変わる。
💡 一歩進んだ視点
『7つの習慣』に「関心の輪」と「影響の輪」という考え方がある。自分では変えられないこと(関心の輪)に力を使うほど、実際に変えられる範囲(影響の輪)は小さくなっていく、というものだ。
上司が何を指示するかは、こちらでは選べない。ここに時間を使っても消耗するだけだ。一方で、いつやるか、誰に任せるか、どう伝えるか。このあたりは、まるごと自分の裁量の中にある。板挟みで一番つらいのは、「どちらが正しいか」を心の中で裁こうとしている時だと思う。正しさの判定をやめて、自分が動かせる部分に手を伸ばすと、意外と落としどころは見つかる。
🌟 まとめ
- 指示は「中身」と「目的」に分けて受け取る。目的さえ共有できれば手段は調整できる
- 過去の経緯は反論ではなく事実確認として置き、相手の面子を潰さない
- 現場には「上が言ってるから」ではなく、自分の言葉に翻訳して伝える
- 指示そのものは変えられない。変えられるのは、いつ・誰が・どう伝えるかの方だ