
📍 シチュエーション
前日に近隣でイベントがあり、店は普段より賑わっていた。翌日は月曜。開店前の発注では「イベント翌日の月曜は、実績上ほぼ売上が落ちる」というデータを踏まえて、控えめな数量で発注量を仮設定していた。
ところが昼のピークタイムに入ると、予想以上に客足が続く。レジの手が止まらない。「今日はいけるかもしれない」。そんな感覚が頭をもたげる。結局、下限で組んでいた発注量を上方修正してしまった。
閉店後、数字を見て後悔した。翌日まで残って廃棄せざるを得ない在庫(いわゆる「夜間ロス」)が大きく膨らんでいたのだ。過去の実績データは正しかった。ピーク時の勢いに引っ張られ、目の前の景色だけで判断を変えてしまったことが原因だった。
❌ よくあるNG対応
- 「今の勢い」だけで発注・仕込み量を判断してしまう
ピークタイムの手応えは強烈で、その場の感覚が過去データより優先されがちになる。 - データを見ていても、土壇場で「今日は特別」と例外扱いしてしまう
実績という根拠があるのに、目の前の忙しさに気を取られて自分の判断で上書きしてしまう。 - ロスが出た後、原因を「客足が読めなかったこと」で片付けてしまう
本当の原因は客足の予測ミスではなく、「持っていた正しいデータを土壇場で無視したこと」にある。ここを混同すると同じ失敗を繰り返す。
✅ 店長(SM)目線の推奨対応
ピーク時の判断は、感覚ではなくあらかじめ決めておいた基準に従う。今回のケースで言えば「前日にイベントがあった翌月曜は発注を抑える」というルールを、事前に紙やメモで明文化しておき、当日の高揚感に左右されない仕組みにするのが有効だ。
ポイントは、判断のタイミングを「ピーク中」ではなく「発注時点」に固定しておくこと。人は忙しい最中の情報ほど強く印象に残り、静かな時間に見たデータより優先してしまう性質がある。だからこそ、判断基準は忙しくなる前に確定させ、ピーク中は「基準通りに動いているか」を確認するだけにとどめる。これだけでぶれが大幅に減る。
💡 一歩進んだ視点
これは行動経済学でいう「直近の鮮烈な体験が判断を歪める」現象に近く、カーネギーの説く「感情に流されず、事実に基づいて判断する」姿勢とも重なる。目の前の熱気に流されるのは人として自然な反応だが、店舗運営では「今、自分はデータより感覚を優先していないか」と一呼吸置く習慣が、ロスや欠品を防ぐ最大の武器になる。
スタッフに発注や仕込みを任せる場面でも同じことが言える。「なぜその数字にしたのか」を聞いたとき、答えが「なんとなく忙しそうだったから」であれば、それは仕組みの説明不足のサインだ。判断基準を言葉にして共有することが、感覚頼みの発注から抜け出す第一歩になる。
🌟 まとめ
- ピーク時の勢いは、判断を狂わせる最も強力なノイズになる
- 発注・仕込みの基準は、忙しくなる前に決めておく
- 「なぜその判断をしたか」を言語化できる状態を目指す